観客一人ひとりが自らの物語を再発見するような、深く心に響く作品
― SUDART-CULTURE プレミア批評
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FESTIVAL OFF 2024/ Sudart-Cultureが観た作品の再演およびプレミア批評
2024年のアヴィニョン・オフでは、1682本もの作品が上演され、そのうち466本が新作、370本がアヴィニョンで初演されるものとなります。1400以上のカンパニーが参加し、1270がフランス国内、125が海外から集まり、総勢4000名のアーティストが街全体を巨大な舞台に変え、141か所の劇場で生きたパフォーマンスが展開されます。 「BLANC DE BLANC」 10:45 / THÉÂTRE TRANSVERSAL / 2024年6月29日〜7月21日 奥野衆英による詩的なジェスチャーの世界へ この1時間の公演は、日常の小さな瞬間を詩的に描き出し、ピアノの旋律と緻密な身体表現が絶妙に調和した、非常に完成度の高い作品です。音楽はジョーダン・チュマリンソンのピアノが全編を通して流れ、観客を静かに奥野の詩的な宇宙へと誘います。終演後、奥野自身が語った通り、「観客の想像力をかき立てること」を目的としており、その目的を見事に果たしていると言えるでしょう。 マルセル・マルソーの後継者と評される奥野の身体表現は、極めてシンプルでありながら、動作一つひとつに完璧なまでの精度を持っています。また、舞台上にはさまざまなサイズの白い風船が配置され、その抽象的な舞台装置が、言葉にできない感覚を巧みに補完しています。 作中では、「たそがれの時」「枯れ葉と手紙」「仕立屋の男」などの小品が展開され、それぞれが黒板にタイトルを書き込む場面では、ジャック・タチを思い起こさせます。 作品の終盤には、観客に空想の「白ワインのグラス」を手渡すかのような演技があり、最後には人間味あふれる自画像で締めくくられます。奥野衆英はその優れた芸術性と人間性を体現し、静かで穏やかながらも、深く感動を呼び起こすパフォーマンスを提供します。 この作品は、非常に幅広い層の観客に適しており、とくに文学的な感性を持つ人々にとっては、自らの経験や想像力を膨らませる材料となるでしょう。観客一人ひとりが自らの物語を再発見するような、深く心に響く作品です。 Critique Blanc de blanc de Shu OKUNO / SUDART-CULTURE(原文) |