これは手の届く詩的な世界への、繊細なダイブだ。
― マリー=ロール・バルボー
« M La Scène » マリー=ロール・バルボ-評
2024年7月17日掲載
2024年7月17日掲載
奥野衆英が『Blanc de blanc(白の中の白)』をアヴィニョン演劇祭OFFの一環で、Théâtre Transversal(トランスヴェルサル劇場)にて発表する。これは手の届く詩的な世界への、繊細なダイブだ。
« 絵画的なマイムと身体の詩人 » 東京生まれの奥野衆英は、自身を新しい表現形式を追求するクリエイターとして定義している。彼は有名なマルセル・マルソーやエティエンヌ・デクルーに師事し、その影響を受けながらも、自らの芸術的道を切り開いてきた。彼が目指すのは、ダンスと詩が融合した独自のビジョンを発展させることである。自らを「絵画的なマイム」と「身体の詩人」と称し、従来のマイムを超越し、その作品を「ジェスチャーの芸術」と呼んでいる。 パンデミック中、彼は自身の作品に合う音楽を探していた時、ピアニストのジョルダン・トゥマリンソンの楽曲『Ambiance Dimanche (日曜日の雰囲気で)』を発見し、連絡を取り合うようになる。以降現在に至るまで二人は対面したことがないにもかかわらず、音楽とマイムが融合した作品を共に創り上げた。『Blanc de blanc(白の中の白)』では、ピアノとジェスチャーが一体となり、主にフランスの風景に根ざした人生の瞬間を表現している。 « 時間が夢見る別世界 » 『Blanc de blanc』は複数の場面から構成され、観客の想像力に委ねられている。奥野衆英は黒い背景にチョークで各場面のタイトルを記す。「L’heure bleue(たそがれの時)」、「Blague cosmique(枯葉と手紙)」、「Ambiance dimanche(日曜日の雰囲気で)」、「Blanc de blanc(白の中の白)」、「Le Tailleur(仕立て屋の男)」、「Autoportrait(自画像)」など、各シーンは哀愁、喜び、ユーモアに満ちた独自の色彩を帯びて展開される。彼は一人で舞台に立ち、身体、顔、そして手を使って繊細な世界を描き出す。時折、影絵の技法が用いられ、それぞれの観客に幼少期への道を開いてくれる。 建築家・石塚菜々子のグラフィカルな舞台美術は、身体が空間に描き出すビジュアルな表現を豊かにしている。大小様々な白い球体で構成されたこの舞台装置は、私たちの世界とは異なる風景を思わせる。それは時間が夢見る、停滞した別世界であり、そこには完璧に動く衛星のような存在が漂っている。冒頭の青い光に包まれた球体は、光と影に覆われた美しいイメージを作り上げている。 奥野衆英による『Blanc de blanc』は、その純粋さで、マイムの芸術を再発明する詩を築いている。Théâtre Transversalでぜひ観劇してほしい作品。 — M la ScèneのLes LM LMMMM(※5点満点中4点) |
マリー=ロール・バルボ-
(フランスの演劇評論家およびジャーナリスト。主にインタビューを通じ、演出家や俳優、劇作家の創作過程に関する議論を深めており、中にはオーロール・ファティエやステファン・イレルといったヨーロッパ演劇界の著名な人物も含まれる。彼女の活動はフランスの文化や演劇業界で重要な役割を果たしており、その深い洞察はフランス内外の演劇界に広く影響を与えている。) Critique Blanc de blanc de Shu OKUNO / M la Scène(原文) |